花火大会
多摩川の花火大会。申し込んでいた観覧席が当たって
公民館のある7階のフロアーからまさに高みの見物。
悔しいことに視界には一棟中層のマンションがあるのでそれより
高い花火しか見えないけれど、
冷房も効いて、虫も来ず、しかも会場ではいちばん前のかぶりつき。
ゆっくり堪能できて友人も妹も夫も大いに満足。
ウワーという歓声が深いため息につながるように
花火の美しさとはかなさは見ながら
何かしら人生を思わずにいられない。
いつも私は芥川龍之介の舞踏会の一節の情景が目に浮かぶ。
・・・・明子と海軍将校とは云ひ合せたやうに話をやめて、庭園の針葉樹を圧してゐる夜空の方へ眼をやつた。其処には丁度赤と青との花火が、蜘蛛手(くもで)に闇を弾(はじ)きながら、将(まさ)に消えようとする所であつた。明子には何故かその花火が、殆悲しい気を起させる程それ程美しく思はれた。
「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生(ヴイ)のやうな花火の事を。」
暫くして仏蘭西の海軍将校は、優しく明子の顔を見下しながら、教へるやうな調子でかう云つた。・・・

公民館のある7階のフロアーからまさに高みの見物。
悔しいことに視界には一棟中層のマンションがあるのでそれより
高い花火しか見えないけれど、
冷房も効いて、虫も来ず、しかも会場ではいちばん前のかぶりつき。
ゆっくり堪能できて友人も妹も夫も大いに満足。
ウワーという歓声が深いため息につながるように
花火の美しさとはかなさは見ながら
何かしら人生を思わずにいられない。
いつも私は芥川龍之介の舞踏会の一節の情景が目に浮かぶ。
・・・・明子と海軍将校とは云ひ合せたやうに話をやめて、庭園の針葉樹を圧してゐる夜空の方へ眼をやつた。其処には丁度赤と青との花火が、蜘蛛手(くもで)に闇を弾(はじ)きながら、将(まさ)に消えようとする所であつた。明子には何故かその花火が、殆悲しい気を起させる程それ程美しく思はれた。
「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生(ヴイ)のやうな花火の事を。」
暫くして仏蘭西の海軍将校は、優しく明子の顔を見下しながら、教へるやうな調子でかう云つた。・・・
